抱っこが好きな子、嫌いな子。その違いは?

~好きな距離は、それぞれ違う~

抱っこすると、そのまま身体を預けてくれる子。

反対に、抱き上げた途端に身体をよじったり、腕から降りようとしたりする子。

犬や猫と暮らしていると、「抱っこが好きな子」と「どうも苦手そうな子」がいることに気づきます。

 

なかには、

「こんなに嫌がるということは、あまり懐いてくれていないのかな」

と少し寂しく感じたことがある方もいるかもしれません。

けれど、抱っこを嫌がることと、その人を嫌っていることは同じではありません。

 

そばにはいたい。

撫でてもらうのも好き。

自分から膝の上に乗ってくる。

 

それでも、身体を持ち上げられるのは苦手。

そんな子がいても、不思議なことではないようです。

 

 

「触られること」と「抱っこされること」は少し違う

私たち人間にとって、抱っこは親しみや愛情を表す行動のひとつです。

けれど犬や猫の側から考えてみると、抱っこにはもう一つの側面があります。

身体が床から離れ、自分では自由に移動できなくなることです。

 

歩いて離れることも、少し距離を取ることも、自分のタイミングで降りることもできません。

もちろん、だから抱っこが必ず怖いというわけではありません。

慣れた人の腕の中で安心する子もいますし、自分から抱っこを求めるような子もいます。

 

ただ、

「人に触られるのが好き」

ということと、

「身体を持ち上げられ、動きを制限されても平気」

ということは、分けて考えたほうがよさそうです。

犬については、人から撫でられることを好むことを示した研究があります。

一方で、身体の一部を保持されたり、自由に離れにくい状態になったりすると、顔を背ける、耳を後ろへ引くなど、緊張や葛藤と考えられる行動が増えることも報告されています。

 

つまり、

「撫でてほしいけれど、抱っこは嫌」

という反応にも、矛盾はありません。

 

 

猫では「抱かれたときの反応」に個体差も

猫については、もう少し直接的に「抱かれたときの反応」を調べた研究があります。

家庭で暮らす猫を成長の途中から継続して観察した研究では、人に抱かれたときに、どのくらい逃れようとするかには猫ごとの違いがあり、その違いは成長してからも比較的安定していました。

 

別の研究でも、抱き上げられた猫が身体をよじって抜け出そうとするまでの時間などが、個体ごとの反応の違いを測る指標として使われています。

だからといって、

「この性格の猫は抱っこ嫌い」

と単純に分類できるわけではありません。

ただ少なくとも、抱かれたときの反応には、その子その子で違いがあることは、研究のなかでも確認されています。

 

いつでも腕の中にいたい子もいれば、撫でられるのは好きでも持ち上げられるのは苦手な子もいる。

それも、その子なりの人との付き合い方なのかもしれません。

 

 

子犬・子猫のころの経験は関係する?

犬や猫が幼い時期にどのような経験をするかは、その後の人との関わり方に影響することがあります。

子犬や子猫の社会化については多くの研究があり、幼い時期に人と穏やかに接した経験が、その後の人への反応に関係することは知られています。

 

ただし、

「子猫のころにたくさん抱っこされたから抱っこ好きになる」

あるいは、

「子犬のころに抱っこされなかったから大人になって嫌いになる」

とまで言える研究はありません。

 

もともとの個体差もありますし、その後に経験したこと、誰に抱かれるのか、その日の体調や気分など、さまざまな要素が関係すると考えられます。

抱っこが苦手な理由を、一つの原因だけで説明するのは難しそうです。

 

 

抱き方によっても感じ方は変わる

抱っこの方法も無関係ではありません。

身体の一部だけを支えて持ち上げると、不安定になりやすくなります。

胸やお腹、後ろ脚側などを身体に合わせて支え、できるだけ安定した姿勢をつくることは大切です。

特に猫の場合、身体がぶら下がったり、後ろ脚の支えがなくなったりすると、不安を感じる子もいます。

 

ただし、ここでも注意したいのは、

「正しい抱き方をすれば、どんな子でも抱っこ好きになる」

という話ではないことです。

どれだけ丁寧に支えていても、そもそも持ち上げられること自体を好まない子はいます。

 

 

「もう降りたい」のサイン

抱っこを嫌がっているときには、犬や猫がいろいろな形でその気持ちを表すことがあります。

身体をよじる。

腕から抜け出そうとする。

顔を背ける。

耳を後ろへ引く。

身体が急に硬くなる。

猫なら尾を大きく動かすこともあります。

 

ただし、一つの行動だけで「嫌がっている」と決めつけることはできません。

そのときの表情や身体全体の様子、普段との違いなどを合わせて見ることが大切です。

そして、明らかに降りたがっているのであれば、安全な場所でそっと降ろしてあげる。

それだけでも、

「嫌がっているのに、ずっと我慢させられる」

という経験を減らすことができます。

 

 

無理に「慣れさせる」必要はない

抱っこを嫌がると、

「毎日やっていれば、そのうち慣れるかな」

と思うこともあるかもしれません。

 

もちろん、短く穏やかな経験を重ねることで、少しずつ平気になる子もいるでしょう。

ただ、嫌がっているのに長時間抱き続けたり、逃げようとするたびにつかまえ直したりすると、それが安心できる経験になるとは限りません。

抱っこだけでなく、人の手そのものを警戒するようになる可能性もあります。

 

「抱っこができる子にする」ことよりも、

その子がどのような触れ合い方なら心地よく過ごせるのか。

そこを探してあげるほうが、大切なのかもしれません。

 

 

それでも、抱き上げなければならないときもある

とはいえ、まったく抱き上げずに暮らせるとは限りません。

通院するとき。

車へ移動するとき。

危険な場所から離してあげるとき。

災害などで避難するとき。

どうしても身体を持ち上げる必要がある場面はあります。

そんなときのためにも、普段から無理のない範囲で身体に触れたり、ほんの短時間だけ持ち上げてすぐ降ろしたりして、

「持ち上げられても、すぐ安全な場所へ戻れる」

という経験を重ねておくことは役に立つかもしれません。嫌がる場合には無理をせず、キャリーケースや移動用の道具を上手に使う方法もあります。

 

そして、これまで平気だった子が急に抱っこを嫌がるようになった場合には、単なる好みではなく、どこかに痛みや身体の違和感がないかという視点も忘れないようにしたいところです。

 

 

その子なりの距離で

いつでも腕の中にいたい子もいます。

撫でてもらうのは好きだけれど、抱っこは少し苦手な子もいます。

人の隣で寝ることを選ぶ子。

少し離れた場所から、こちらを見ている子。

人との距離の取り方は、それぞれ違います。

 

 

抱っこを嫌がるからといって、その子との関係が浅いとは限りません。

私たちが「こうしてほしい」と思う距離ではなく、その子自身が安心できる距離を知っていくこと。

それも、犬や猫と一緒に暮らすなかで育っていく、大切な関係のひとつなのだと思います。

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