三毛猫の遺伝子が解明!毛色と人の“好み”の不思議な関係

~最新研究と文化の視点から、猫の模様の秘密を探る~

「どうして三毛猫はほとんどがメスなのか?」
そんな素朴な疑問に答える研究が、ついに一歩先へ進みました。
2025年春、日本と海外の研究チームが、三毛猫の毛色を決める“オレンジ遺伝子”を特定したのです。ARHGAP36というX染色体上の遺伝子に起きた約5,000塩基の欠失が、黒とオレンジの模様を生み出す仕組みに深く関わっていることが分かりました。60年以上追い求められてきた謎のピースが、ようやく見つかったのです。
 
けれど、猫の毛色や模様を形作ってきたのは、遺伝子だけではありません。
実は“人間の好み”も、猫たちの姿を変えてきた大きな要因なのです。
 
 

好みによって変わる毛色の分布

このテーマは、実は50年以上前から研究されてきました。
1970年代にイギリス・グラスゴーで行われた調査では、地域や社会階層によって「明るい色の猫が多い」といった傾向が見られ、飼い主の選択が猫の遺伝子頻度に影響している可能性が示唆されました。古い研究ながら、人間の美意識が猫の姿を左右してきた一例です。
 
そして近年、アメリカのシェルターを対象にした調査でも、毛色によって譲渡率に差があることが確認されています。黒猫は迷信や映画の影響で敬遠されやすい一方、オレンジや白猫は「親しみやすい」「映える」といった理由から選ばれることが多いのです。人の文化や好みが、今も猫たちの未来を左右していることが分かります。
 
 

黒猫に宿る二つの顔

特に象徴的なのが黒猫です。
ヨーロッパでは中世以来「魔女の使い」として迫害され、ハロウィン文化でも不吉の象徴として描かれてきました。そのイメージはいまも根強く残っています。
 
けれど同時に、黒猫は「漆黒の美しさ」が高く評価される存在でもあります。キャットショーでは単色の均整が取れた毛並みが理想とされ、ボンベイなど黒を基調とする猫種は“高級感”を象徴する存在として人気を集めています。ネガティブな迷信と、ポジティブな評価。その両極のあいだに黒猫は生きてきたのです。
 
 

三毛猫と日本の“幸運”文化

日本では逆に、模様が複雑な猫に特別な意味が与えられてきました。
三毛猫は「招き猫」に姿を変え、船乗りの守り神として大切にされ、幸運を招く存在とされてきました。海外では「不吉」とされた黒猫も、日本では「福猫」として愛されるなど、文化によって毛色や模様への視線はまったく異なるのです。
 
 

日本の新しい毛色 “サバトラ”

さらに日本では、戦後から少しずつ目立つようになったとされる“新しい毛色”があります。それが「サバトラ」です。
銀色の地毛に黒い縞模様が入ったサバトラは、魚のサバの色に似ていることからそう呼ばれます。キジトラの茶系とは異なり、洋猫由来のシルバーの遺伝子が混ざったことで登場したと考えられており、比較的新しい毛色とされているのです。
 
サバトラが「珍しい毛色」とされる背景には、海外からの猫の流入や交配、そして飼い主が“映える毛色”を好むようになった文化的な選択圧も関わっているのかもしれません。この存在は、猫の姿が遺伝子と同時に人間の文化や嗜好に左右されてきたことを示す、身近な例といえるでしょう。
 
 

遺伝子と文化の間に

猫の毛色や模様を決める遺伝子には、黒やオレンジを決定するO遺伝子や、縞模様を生むタビー遺伝子、白斑を作る遺伝子など、さまざまなものが関わっています。
こうした遺伝の仕組みについて詳しくは、以前のコラム
👉猫の色彩遺伝の不思議
でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
科学は進み、三毛猫やサバトラのような模様を生み出す遺伝子の正体が少しずつ明らかになってきました。しかし猫たちの毛色や模様の物語は、それだけでは語り尽くせません。人間の文化や美意識、そして「この子が好き」という小さな選択が積み重なって、今の猫たちの姿を形づくってきたのです。
 
 
あなたはどんな毛色や模様の猫に心惹かれますか?
科学と文化の交差点にいる猫たちを見つめるとき、そこには遺伝子の働きだけでなく、人と猫が紡いできた長い歴史も映し出されているのかもしれません。
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